Glocal Government Relationz

川根本町のGRスタディーツアー

2018年11月19日

GR:Government Relations

吉田雄人ゼミの第2期修了生の新谷さんのお誘いを受け、静岡県川根本町に1泊でスタディーツアーをしてきました。

行きの車の中では、新谷さんから川根本町についてブリーフィングが。7000人から順調に人口は減っていて、毎年200人くらい減っている。高齢化率は、40%を超えて、静岡県内2位。川根町、中川根町、本川根町と3つの自治体があったが、川根町が島田市に合併。中川根と本川根が合併して、川根本町が出来上がった、ということを教えていただきました。また、宮田さんからは、大井川鐵道が蒸気機関車やアプト式の列車を現役で走らせていることなどのレクチャーが。夏のシーズンは機関車トーマスのラッピングで50万人近い人が来るということなどを教えていただきました。

さて、川根、と聞いて思い出すことはなんでしょうか? 年輩の方は「お茶」と即答される方が多いと思います。けれども、お茶の単価が往時の3分の1ほどになってしまっているということで、後継者の問題や新たなイノベーションの生まれにくい土壌などについても教えてもらいました。

他にも、寸又峡温泉や接岨峡温泉、千頭温泉など、泉質の良い温泉群があったり、「夢の吊り橋」に代表される吊り橋も多くあり、観光地としての資源も多く眠っていることなどもわかりました。

そういう中で、色々みていこう!ということで、湖上の駅であるとか、蒸気機関車との伴走であるとか、お茶の淹れ方講習だとか、長島ダムという巨大ダムであるとか、川根本町資料館であるとかを、見学して回りました(これだけでも相当の文量になりますがメインディッシュではなかったので割愛!)。細かく案内をいただく新谷さんは、実は川根本町出身でもなんでもなく。支援している会社(ゾーホージャパン社:http://www.zoho.co.jp)が川根本町にオフィスを開設するというご縁で、関わり始めたというのがきっかけ。それ以来「プロジェクトK」と銘打った川根本町の活性化を議論する会議を月に1度ファシリテーションするのが、ボランタリーな役割になったということで、案内の丁寧さも上手さも川根育ちさながらのものでした。今回は直接お話を聞くことはできませんでしたが、ゾーホージャパンの川根本町オフィスは拝見させていただきました。新谷さんからシングルマザーの積極採用や地元高校との連携事業についてレクチャーをいただき、とっても地元貢献を意識している企業だということがよくわかりました。

さて、1日目にお会いした方は、そのプロジェクトKの仕掛け人でもある、NPO法人かわね来風(かわねらいふ:http://www2.wbs.ne.jp/~k-life/)の浜谷事務局長でした。「川根のためならなんでもやる」というまっしぐらな方で、この10年間での取り組みには圧倒されました。一般の企業であれば、「本業」があり、それと相乗効果のあるものであれば派生した業務として事業を推進することなどはあるかもしれませんが、浜谷さんはとにかく川根のためになれば、なんでもやってしまうので、一つ一つの事業の関係性は、パッと見るだけではわかりません。例えば、キャンプ場の運営や、一人暮らし高齢者へのお弁当宅配、農産物を生産現場から大型直売所への配送など、まったくつながりは見えません。けれども「川根のため」という想い一つで進めているので、決してブレることがないこともわかりました。他にも、地域支援コーディネーターと呼ばれるご高齢の方の居場所づくりや送迎事業、子どもから大人まで参加できる生涯スポーツの教室運営、放課後の児童のための学童クラブ、農園事業や直売施設運営、移住定住支援事業、農家民泊支援事業、、、、もうすでに小さな市役所です。一つ一つ丁寧に、どのような困りごとをかかえる人の役に立つ事業なのか、説明をしていただきました。

1日目のお宿は、その浜谷さんにご紹介いただいた「茶風花」さん。東京の府中で飲食店を営んでいた佐藤さんご夫妻が昨年移住を決めて、農業体験宿泊事業をスタート。一緒に作った料理の中には、3年もののヤマメの干物の炉端焼きや鹿肉の刺身、柚子を効かせたすいとんやヤマメの卵の和え物など、地元のものをふんだんに使った食事をご用意いただきました。この夕食と、宿泊・朝食が込みで一人7500円は安すぎる!と全員が舌鼓を打ちながらのホクホク顔。佐藤さんご夫妻の移住にあたっての困りごと(例えば病院がないことや公共交通の値段が高いこと)などは、なるほどと思いながら、それでも果敢にチャレンジする姿に脱帽しました。

2日目は、早起きして、川根本町千頭駅周辺を朝ラン。朝靄(あさもや)が山間(やまあい)にたなびく様や、段々と続くお茶畑と所々にニョキっと立つ巨大送風機などが、時間の流れをものすごく緩やかに感じさせてくれました。大井川鐵道を走る見たこともない古〜い車両の列車や人道橋の上を走るヘルメットをかぶった自転車の高校生などタイムスリップしたような気持ちになりました。

午前中は、体験ツーリズムの実地を見学しようと、一般社団法人エコティかわね(http://kawanehon-eco.com)さん主催のカヤック教室に。水にもほとんど濡れないということで着替えもせずに一人乗りのカヤックに乗せてもらいました。接岨湖というダム湖の湖面は、風も波もないので、カヤックが立てる水紋だけが走り、止まっていると水の上とは思えないほど。紅葉に染まる山々をのーんびり眺めながら、人工的な音のない世界を楽しみました。

午後はその体験ツーリズムを主催しているエコティかわね代表の芦沢さんのお話をお聞きしてきました。かつては農協に勤務していたそうですが、川根のために自分のやりたいことをトコトンんやりたいという思いで、独立・起業。とにかく若い人にもっともっと川根本町のことをわかってもらいたいし、それを伝えていきたいということでした。独立当初は資金繰りに困ることなどもあったそうですが、基金という形で仲間に資金提供してもらうなど、公益団体が陥りがちな罠を川根愛で乗り越えてこられたそうです。とにかく、危機感がすごかったです。川根といえば、お茶で名が知れてるしトーマスでの集客はあるかもしれないですが、それが具体的に市民が恩恵を浴するところまで至っていないという問題意識を強くお持ちでした。また、市役所にいらっしゃるキーパーソンとの連携なども含めて、いわゆるステークホルダーにこの「危機感」は共通しているようでした。

帰りは、これから売り出そうという「柚子」のかけぽんや羊羹をお土産に買って、電車へ。2日間に渡ってみっちりアテンドしてくれた新谷さんに改めてありがとうです。この恩返しは必ず!

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